何でもないときは矢でも鉄砲でももってこいという気になるけれども、健康上に故障があったり、運命上に少しでもままならないことがあると、そういう場合こそ、より一層心の態度が積極的であらなきゃならないのに、すぐ青菜に塩みたいになってしまう。こういうのを積極的態度というんじゃないんですよ。どんな場合があっても積極的というのは、心の尊さと正しさと清らかさが失われない状態をいうんです。
つまり、どんな大事に直面しても、どんな危険な場合に直面しても、心がいささかもそれによって慌てたり、あるいは恐れたり、あがったりしない、いわゆる平然自若として、ふだんの気持ちと同じようにこれに対処することができる状態。そいう気持ちになってこそ、はじめて人間として立派な仕事をやりとおせ、自分の人生を立派に生きることができるんです。
昔の歌に、「晴れてよし 曇りてもよし 富士の山」というのがあるね。富士山というのは、天気だろうが、曇って雲がかかろうと、そのもとの姿は変わらない。あの状態、あれがいわゆる絶対積極の気持ちなんです。