今夜から寝がけに、必ず、寝床の中へ入ったら最後、昼間の出来事と心を関係づけさせない努力をするんだ。人間、生きている間、自分がいくら朗らかに生きていようとしたって、はたから来る波や風は、これはもう防ぐことがでいない。それが人生だ。
けれども、いったん寝床に入ったら最後、どんなつらいこと、悲しいこと、腹の立つことがあったにせよ、明日の朝、起きてから考えることにするんだ。寝ることと、考えることをいっしょにしたら、寝られなくなっちまうぜ。どんな頭のいい奴だって、いちどきに二つのことを思いもできなければ、おこなうこともできない。たった一つのことしかできないはずだ。
寝るなら寝なさいよ。寝床に何しに行くんだ。考えに行くんじゃなかろうが。あそこは考えごとは無用のところだ。一日中、昼間の消耗したところのエネルギーを、一夜の睡眠、夢たけく眠ったときに、また蘇る、盛り返る力をうけるところだ。寝ている間、あなた方の命を守ってくれている大宇宙は、ただ守ってくれているばかりでなく、疲れた体に、蘇る力を与えてくれている。昔から言うだろう。「寝る子は育つ。よく寝る病人は治る」。その力をうけようとする前に、眉に皺をよせて恨んだり嫉んだり、泣いたりするなんて、罰当たりなことはしないようにするんだ、今夜から。